Third Way(サードウェイ) 第3の道のつくり方/山口絵理子 

僕を直接知っている人は、僕がコアに山口絵理子さんの、マザーハウスのファンだと知っているはずです。先日、大学で経営戦略(と経営理念)について講演をしたのですが、1/3くらいの時間、マザーハウスを事例に話をしていました。

山口さんの処女作である『裸でも生きる』を読むと、「信念と情熱、行動力と突破力」の人との印象を受けると思います。僕も最初はそう思っていました。しかし、店頭やイベントで言葉を交わしたり取材でお話を聞かせていただいたりする中で、それだけではないことに気付きました。動きながらも内省し深く考えてからまた動く。そうやって思考を深めながら、ご本人も会社も成長し続けているのです。

起業して13年、経験と思考を通して「深化」させてきた山口さんの考え方を知ることのできる本です。

<目次>
1章 社会性とビジネスのサードウェイ
2章 デザインと経営のサードウェイ
3章 個人と組織のサードウェイ
4章 大量生産と手仕事のサードウェイ
5章 グローバルとローカルのサードウェイ


社会性とビジネス、組織と個人、デザインと経営など、二項対立になりがちなテーマについて、山口さんがどう考え、どう乗り越えてきたか、その哲学が語られています。

日本の組織の多くは、あいかわらず足して2で割る意思決定をしています。2で割れなければ両論併記です。これでは何も決められません。
一方、「決められない」ことへの批判から、とにかく白黒つける、それが決断だという風潮も生まれてきています。結果、「自分の考えと違うやつは全部バカ」という乱暴な議論がネットを中心に横行しています。

僕は、足して2で割ったり白黒どちらかに寄せてしまったりして無理に決めてしまう風潮に異議を唱えたいとずっと考えてきました。グレーゾーンはグレーゾーンとして、その曖昧さに耐える必要があると思うからです。

山口さんは耐えるところに留まりません。両者の良いところを取って新しいものを生み出そうとします。それを「サードウェイ」と呼んでいます。

たとえば「マーケットイン」か「プロダクトアウト」かについて。

現在の主流は「マーケットイン」でしょう。マザーハウスも開業当初は「お客様の声を聞く」を大事していました。だから、卸をやめて直営店をオープンしたわけです。そうやって集めた声をプロダクト開発に活かして、売上を伸ばしていきます。しかし、あるところで成長が鈍化します。「お客様の声を拾うだけではもう足りない」と考え始めたそうです。

データ分析からつくられるものは安定したヒット商品を生み出せるかもしれない。しかし、それらは人々の心に感動を与えられるだろうか? 数字では計れない感動を生むのは個人の主観から生まれる創造なんだと思う。(p108)

3C分析(自社、競合、顧客・市場)は顧客・市場から始めよ、と言われます。僕はずぅと疑問を感じてきました。「お客様の声」を拾い集めて製品・サービスの開発をすれば、ほぼ同じ結論に達してしまいます。金太郎飴のような製品・サービスしか生まれてこないのではないか。「差別化」はどこに求めるのか、と思っていたのです。

「最大の差別化要因は『主観』だ」
と、マザーハウスの山崎副社長がおっしゃっていたことがあります。まず「自社(自分)」に何ができるのか、何をしたいのか、そこを明確にすることが、競合との差別化を生む要因なはずです。

だからといって「プロダクトアウト」至上主義がいいわけではありません。まず自分の主観に基づく製品を送り出し、それに対するお客様の反応を確かめていく。お客様とキャッチボールをする感覚だと山口さんは書いています。

そうやって生まれたアイディアをさらに昇華させていくことが、私なりのサードウェイのものづくりだ。(p109)

山口さんの歩みを知っていると「なるほど、あのときはそう考えていたのか」とわかることがたくさんあります。そこから気づくこともたくさんあります。だからできれば『裸でも生きる』シリーズも読んで、山口さんやマザーハウスの歩みを知って欲しい。その方が、理解が深まります。

そして、我が事に引きつけてみるといい。シンプルに考えることと単純化することは違います。相反する二軸を単純化して簡単に答えを出すのではなく、掛け合わせてもっといいアイディアにならないか考えることで、新しい道は生まれてくるのだと信じています。

<『裸でも生きる』シリーズ』

読書】裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~



読書】裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける


【読書】自分思考


読書】輝ける場所を探して 裸でも生きる3 ダッカからジョグジャ、そしてコロンボへ