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弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門/上杉惠理子

マーケティングのことを何も知らない人はこの本から読むといいでしょう。そのくらい、わかりやすく、やさしく書かれています。「入門」書としては優れものです。

約150ページと分量は多くありませんが、内容はしっかりしています。分量を抑え、潰れかけの喫茶店を再建するストーリー(つまりは事例です)を通して解説しているので、初心者にとっては理解しやすいと思います。

<目次>
第1章 店主エミがやらかしたマーケティング的にマズい3つの行動とは?
第2章 喫茶店ワーグナーの「強み」を3C分析で掘り起こす
第3章 STP分析で見つけたエミの理想のお客さん
第4章 4P分析でワーグナーのすべてをお金に換える
 補講 プロモーション 2つの戦略 〜アドとパブ〜
第5章 資金ゼロからのSIPSプロモーション戦略
第6章 クロスSWOT分析で「弱み」を「強み」に変える
 補講 コモディティ化を打破するSWOT分析・クロスSWOT分析
第7章 マーケティングに終わりなし 進化し続けるためのツール

3C分析、STP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)分析、4P分析、プロモーション、クロスSWOT分析、以上が取り上げられている項目です。特別なことはありません。
 *3C・・・Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)
 *4P・・・Product(製品)、Price(価格)、Place(販売チャネル)、Promotion(販売促進)


プロモーションについては、従来の基本モデルAIDOM、インターネット活用のAISASを踏まえた上で、SNS時代の新しいモデルとしてSIPSを取り上げていますが、これも従来の理論の延長線上にある考え方ですから、特別なことだとは言えません。つまりこの手の本にありがちな、奇をてらうような理論を振りかざすことなく、オーソドックスはマーケティング理論を、解説しています。
 *AIDOM・・・Attention(注意)→ Interest(関心)→Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)
 *AISAS・・・Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)
 *SIPS・・・Sympathize(共感する)Identify(確認する)Participate(参加する)Share&Spread(共有・拡散する)


僕が「入門書として優れものだ」というのはそういう理由からです。「入門」と称しながら、オーソドックスな理論を「わかりにくい」と排除して、奇抜な理論を持ち出して「これだけでわかる」と主張している類いの本に出会ってしまうことがあります。本書はそんなものとは一線を画します。応用や斬新な理論は基礎的な知識があってこそ役立てられます。ゼロからマーケティングを学びたい人は、まず本書を手に取り、基礎を学ぶのをお薦めします。

ただし、オーソドックスな理論を解説しているからといって、従来からある定番の入門書をわかりやすく書き直しただけでは決してありません。いくつか、こっそり? といままでとは違う考え方も示しています。

一つだけ例を挙げます。3C(Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))分析をどの順番で取り組むか、です。

先ほど、マーケティングは「お客様が求めているものは何か」という顧客からの視点が重要だとお伝えしました。そうすると3C分析でも、Customer 顧客分析や Competitor 他社分析から始めてしまいがちですが、スタートは自社 Company から考えることがポイント。(p38)

明確に「自社から」と言われています。これ、さらっと読み飛ばしてしまいそうですが、多くの類書では、「顧客分析から始めよ」と書いてあります。「顧客 ⇒ 他社 ⇒ 自社 の順番で分析するのがセオリー」と断言している本もありました。

僕はこの考え方には、非常に強い違和感を持っていました。そんなことをしているから日本企業は金太郎飴みたいな商品開発を繰り返すのだ、と内心毒づいてきていたのです。顧客が顕在的に欲しいと思っているものに焦点を当てれば、独自性のある商品は開発のしようがないだろうと思ってきたのです。

上杉さんも前述の続きでこう断言されています。

自社 Company から3C分析を考える理由は、他にない独自の商品を生み出すためです。(p38)

オーソドックスなマーケット理論に基づきつつも、以前勤務していた星野リゾートでの経験はもちろん、和装イメージコンサルタントとして独立後、自らのサービスをどう売っていくのか、試行錯誤しながら実践する中で得てきたものがあるからこその強みだと思います。机上で学んだことだけではないのです。

初心者向けだと書きましたが、ある程度マーケッティングを学んできた人も、自分事に引きつけて読み進めると新しい発見があると思います。そんな人もぜひ読んでいただきたい。お薦めです。