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■ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命/山田敏夫



自分が着ている服がどこの工場で作られているか知っていますか。野菜などの食品では「生産者の顔が見える」ことは販売上の強みになります。スーパーの食品コーナーで、生産農家の名前と場所、顔写真が飾ってあるのを見かけたことがある人は多いでしょう。

しかし、洋服でそうした経験をされた人はいないと思います。OEM(製造を発注した相手先のブランドで販売される製品を製造すること)と言ってしまえばそれまでですが、各ブランドとも、自社工場生産でもない限り、どこの工場で製造されているかを明らかにしていません。

「トレーサビリティ」つまり「『その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか』を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること」の重要性が言われるようになって久しいですが、ファッション業界ではまだまだの状況です。

そんな状況に風穴を開ける挑戦をされている方がいます。ファクトリエの山田社長です。本書はその山田社長による初の著書です。

<目次>
第1章 ファクトリエ前夜
第2章 ファクトリエ、誕生
第3章 ファクトリエの一歩
第4章 ファクトリエの前進
第5章 ファクトリエの試練
第6章 ファクトリエの今

ファクトリエは店舗を持っていません。正確には服のサンプルを置いて試着できるスペースをいくつか持っていますが、そこで購入を決めてもその場から持ち帰りはできません。支払いはすべてインターネット。販売コストを抑えるためにインターネット通販に絞っているのです。

ただこれだけなら、ネットを活用した起業、という話に過ぎません。それほど珍しくもないでしょう。ファクトリエにはその先があるのです。

ファクトリエのホームページを見ると、「工場紹介」のコーナーが目に入ります。自分たちの製品がどの工場で生産されているのか、明示しています。従来、発注元との関係から公開されることのなかった工場に光を当てているのです。

さらに販売価格も工場に決めてもらっています。これも画期的なことでしょう。小売価格が先にあって、それに合わせて製造金額が決まってくる。安く販売することが目的になって、結果、製造サイドにしわ寄せが行く。下請けとして生産をしている多くの中小企業が抱えている問題がここにあります。

日本はものづくり国家だといわれますが、僕は半分信じていません。確かに生産現場の技術力は高い。その意味ではものづくり国家でしょう。しかし、ものづくりに対する敬意がまるで感じられないと思うのです。

かつてはメーカーが力を持ち、販売価格をコントロールしている時代がありました。そんな時代には、ダイエーや家電量販店が独自の値決めで安売りをする挑戦が喝采を浴びたと思います。

時代は移りました。いまや販売サイドが力を持ち、自分たちの売りたい値段になるように生産サイドにプレッシャーをかけています。買い叩いているとしか思えない事例も目にしています。

以前、『和える*』を取り上げたときにも同じことを書きましたが、こんなことを続けていれば、日本の製造業は壊滅するでしょう。損をするのは製造サイド、それでもまだ高いといわれ、販売拠点を海外に移され、結果的に廃業する。そんな様子をこの20年間、嫌と言うほど見せられてきました。

ファクトリエはこうした状況に問題提起をしています。そして、従来とは違う自分たちなりのやり方でもビジネスは成り立つのだと示そうとしているのだと思っています。

もちろん、新しいことにチャレンジするのですから失敗はつきものです。それを恐れない、どころか「猛スピードで失敗しよう」をモットーにされています。失敗なくして成功することはないし、どうせ失敗するならば早い方がいい、ということです。

人間は失敗に学ぶ生き物です。成長できるかどうかは、失敗をどう受け止めて修正するのかにかかっているといえます。しかし、失敗を恐れ、避けたいと思うのも人間の性です。その恐怖を克服して行動し続けるからこそ、いまのファクトリエの成長があるのだと思います。

行動力の秘訣はいろいろあると思います。本書を読んで、その秘訣を読み解き、自分の学びにしてもらうと良いと思います。一つ言えるのは、次のような考え方をされていることもあるのだと僕は考えています。

人間が唯一決められるのは自分の行動だけ。結果はコントロールできません。だからこそ、自分で行動することを放棄するのは、夢を諦めるに等しい。そう思っていました。(p32)

行動をしたから必ず報われるわけではありません。しかし、行動しないことには報われることはありません。

本書を通じて僕が伝えたいのは、「特別な才能や資産がなくても、世界を変えるための行動は始められる」というメッセージです。(p6)

この本を読んで、結果を思い煩うことなく行動し始める人が出ることを願います。僕も次に向けて動きたいと思います。

*『和える』については下記を参照ください。