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金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実 /橋本卓典



世の中で排除されてきた人々や事業者、排除の克服のために働く人々へ本書を捧げる。(p272)

あとがきに書かれた一節です。タイトルは『金融排除』ですが、金融の話だけで終わるわけではありません。なぜ世の中には排除の論理が跋扈し、暴走をするのか。社会は分断されるのか。それを克服する術はないのか、を「金融」を切り口に書いています。こうしたことを書いていくのに、「金融」は格好の、いちばん伝わりやすいテーマだから、題材として扱っているのだと思います。

本来の主題はこういうことです。
世の中や人としてあるべき姿を問いかけること(p272)

〈目次〉
序章 「食い違い」から始まる排除
第1章 事業者から見た排除の風景
第2章 金融排除とは何か
第3章 見捨てない金融
第4章 「排除」の大河に架ける橋
終章 排除の終焉と協同の時代
第1章では、実際に「金融排除」にあった方々の体験談がふんだんに出てきます。 その中には、『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 』で有名な木村秋則さん、オーガニックコットンとしてブランドを確立した今治の「IKEUCHI ORGANIC」もありました。いまや全国的に名が知れ渡っている彼らでも、かつては、激しい金融排除にあっていました。読んでいると、銀行員が極悪非道の人のように思えてくるほど、ひどい仕打ちです。

第2章では、なぜそのような金融排除が起きるのか、が考察されます。さまざまな理由が考えられますが、端的に言えば
「ほとんどの金融機関が、担保・保証があり、優良な格付けの顧客としか取引をしないビジネスモデルになっているから」
だと思います。

アベノミクスで日銀は、大胆な金融緩和を行いました。いまも継続中です。しかし、いくら資金を提供しようとも、金融の現場で金融機関が限られた優良企業としか取引をしないのであれば、世の中にお金がいきわたるわけはありません。一部の優良である企業に金融機関が殺到し、一層の金利競争がおこなわれ、結果として、そうした企業だけが業績を伸ばしていきます。そして、その一部を見て「景気は回復基調にある」と言い出します。しかし、その他大勢の企業は、金融排除されたまま、もがいているのです。そうしたところにまでお金がまわらない以上、本当の意味でのデフレ脱却など絵に描いた餅に過ぎません。

では、金融機関はなぜそんなビジネスモデルを続けているのでしょうか。著者の橋本さんは「金融のビジネスモデルの多様性が失われたから」だと言います。つまり、都市銀行、地方銀行、相互銀行(現第二地銀)、信用金庫、信用組合と、以前はそれぞれに役割が別にあり、カバーする領域が違っていました。ところが、某氏が金融庁長官の時代、金融検査マニュアルによってすべての預金取扱金融機関に融資先の債務者区分の判定を行わせ、かつそれを金融検査で厳しく検証しました。その結果、起業からするとどの金融機関から借りようとしても同じ債務者区分をつけられていることになり、金融機関取引の多様性が失われたのでした。

僕自身、本書を読んであらためて気づいたのですが、銀行と信用金庫、信用組合は根拠法が違います。当然、対象する企業も違ってくるはずです。ところがそれが、「金融処分庁」と揶揄された時代の金融検査などで均一化が進んでしまいました。さらに。バブル崩壊による不良債権問題で、リスクを取ることを恐れるようになったこともあって、とにかく少しでも危ないところには貸さない、という姿勢になってしまったのだと思います。

先に、「銀行員が極悪非道の人のように思えてくる」と書きましが、彼らが根っからの極悪非道の人物であるわけではありません。企業の方針に従っていただけのことです。最前線にいる人たちの問題はもちろんありますが、しかし、根本の問題は司令塔にあるわけです。金融機関のトップが変わろうとしない限り、金融排除の風潮を断つことができません。

ここまでは、読んでいて絶望的な気分にさせられますが、本書はそれで終わりません。第3章・第4章では、「排除の克服のために働く」さまざまな人が紹介されています。

金融排除ならぬ「金融包摂」を実践するいくつかの信用金庫・信用組合が紹介されています。また「これからの日本にほんとうに必要とされる会社」に投資をしていこうとする「鎌倉投信」(僕自身が受益者です)、以前、具体的な取組を支店長から伺ったことがある「島根信用保証協会」など、預金取扱金融機関以外の組織も紹介されています。

わかることは「やればできる」です。リスクを取って一歩踏み出せば、動かないと思った組織も動きます。

そのために必要なことは、本来の目的に立ち返ることだと感じました。目先の利益を追えば、金融排除には一定の合理性があります。しかし、多くの企業が疲弊し、日本経済が停滞し、地域経済が崩壊すれば、貸出先がなくなるわけですから、長期的には金融機関にとってマイナスになります。目先のリスクを取り、地域経済を支え、成長の手助けしていくのは、社会的な責任だけではなく、長期的にみれば金融機関にとって、まわりまわってプラスになるはずです。

リスクを取るのを避けるのが日本企業の特徴であり、市場からは短期益な利益が求められる時代でもあるので、難しい面はあるでしょう。しかし、少子高齢化・人口減少社会を迎えた日本では、排除をすている余裕はなくなるはずです。多くの企業・人を「包摂」していかなければ社会が成り立たなくなります。

金融排除に苦しむ企業の従業員は、消費者でもあります。その人たちに購買力がなければ、一部の優良企業がどんなに製品を量産しても売れるわけがありません。そうなるとすぐに海外展開の話になりますが、海外に活路を見いだせる業界は実はそれほど多くありません。優良企業が優良企業であり続けるためには、日本社会全体に購買力が高まらなくてはならず、そのためには、「排除から包摂へ」の流れは加速させなくてはならないのです。

過去だけを見るから「これじゃダメだ」と排除が生まれます。しかし、将来に希望を見いだせれば、多くの企業や人が包摂されてくると思います。過去にとらわれず、将来の希望を生み出す一翼を担える人になりたい。自分が置かれている立場も踏まえて、そういう人にならなくてはいけないと思っています。

<併せて読みたい本>




〈参考まで IKEUCHI ORGANICの商品例)
オーガニック732 バスタオル ホワイト(今治タオルのIKEUCHI ORGANIC)1枚