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働く人改革 イヤイヤが減って、職場が輝く! ほんとうの「働き方改革」/沢渡あまね




「働き方改革」
この言葉がバズワードのように、連日メディアで取り上げられています。

経営者が自らの無能さを隠すために、従業員を酷使して、必要以上の搾取をして利益が出ているように見せかける。20世紀後半からの規制緩和の流れの中で、マルクスすら想定していなかったような劣悪な職場環境が放置されてきたことを考えれば、少しは前進しているのだと思います。

しかし、違和感も禁じ得ません。働き方改革が労働時間の短縮や休日の増加に矮小化されていると感じるからです。これでは「働き方」が改革されたことにはならないと思うのです。単なる「労働時間」改革でしょ、といいたくなります。

それも半歩前進かもしれませんが、働き方改革の本筋はそこではないと思います。本来は「多様性が共存できる」働き方を、各自が主体性をもってしていくことではないでしょうか。

そのためにどんなこと取り組めばいいのか。本書はそのヒントを示してくれています。
<目次 >
第1章 働く人改革の源泉は「主体性」
第2章 「減らす」仕事と「増やす」仕事
第3章 「らしさ」を育む四つの視点
第4章 世の中の企業の取り組み
第5章 改革に乗ってこない人たちをどうするか?
第6章 働く人改革は誰得?
第7章 働く人改革を定着させるコツ

減らすだけの働き方改革は、うまくいきません。ともすれば、組織に必要なコミュニケーションの時間まで削ってしまったり、新たなチャレンジを阻害したり。減らす一辺倒では、職場の雰囲気もギスギスさせてしまいます。
すなわち働く人改革とは、ネガティブな仕事を減らし、ポジティブな仕事を増やすことです。(p52)

現在、多くの会社が、減らすことには熱心に取り組む姿勢を見せていますが、増やすことについてはほとんど手つかずの会社が多いのではないでしょうか。

おそらく、どうすればいいのかわからないのだと思います。時間を減らすのは具体的に見える化でします。しかし、ポジティブなことを増やそうといっても、さて何から手をつければいいのか戸惑ってしまう場合が多いと思われます。

そういうときは、先行する他者の事例を調べるのが有効でしょう。ただ、この問題について、積極的にメディアにアピールしている会社は少ないのではないかと思います。この手話題になるとサイボウズが必ず取り上げられますが、それはサイボウズが、会社のミッションとして働き方改革に取り組み、それを積極的に社会へアピールしているため、メディアが取材しやすいという事情もあると聞いています。会社案内やホームページには改革への取り組みを載せて、就活生へはアピールしているものの、取引先との事情などで、メディアへの露出は控えているところが多いようです。

しかし、本書には10社の取り組みが載っています。

(株)ポッケ、ヤマハ発動機(株)、(株)カウネット、
(株)ラクーン、日本ビジネスシステムズ(株)、(株)メディアシーク、
興津螺旋(株)、ヤフー(株)、(株)ナムコ、ジャトコ(株)


社名を見れば、「大きな会社だからできることだ」というわけではないとわかるでしょう。そして読んでいけば、各社が取り組んでいることはバラバラだということにも気づくはずです。

自社が置かれた状況に合わせてどんなことに取り組むのか。たどり着くのは「らしさ」だと思います。会社の風土・文化に会った取り組みでなければ定着しません。試行錯誤した過程も含めて書かれているので、参考になることも多いでしょう。

ただ、単純に同じ施策をすればいい、丸ごと真似ればいいとはなりません。「らしさ」が必要な以上、単に真似をしただけではうまくいくわけがないからです。自分たちらしさは、自分たちで見つけていくしかありません。

学ぶべきは、どうやって自分たちらしさに気づいたのか。それをどのように施策に落とし込んでいったのか、その思考の道筋だと思います。

業務量や働き方は変えないで、ただ労働時間を削減するための強制的なルールだけを導入すれば、今以上に現場が疲弊するだけです。話題になった「kintone(キントーン)」の広告、
「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん…ふぅ…(ため息)」
「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」
「さようなら深夜残業。こんにちは早朝出勤。(苦笑)」
のような怨嗟の声があがって、結局何も変わらないどころか悪化することになりかねません。

制度を変えることも大事、でもそれよりも取り組んでいく人自体が変わることです。そのためのサポートを組織がしていく。実例と沢渡さんの解説を通して、自分たちはどうすればいいか考えるきっかけを作ってほしいと思います。本当の意味での「働き方改革」が日本に根付くように。僕自身も、所属している会社が、支援させてもらう会社が、少しでも変わるように尽力していきたいと思います。そのための手引きとして活用していく本だと思っています。

そして、焦らないこと。サイボウズがいまのような働き方を確立するのに12年かかったそうです。1年や2年で劇的な変化は生まれないし、それで「やっぱりだめか」と思ってしまうのはもったいないです。
「さりげなく」(p222)
進めていきましょう。

日本のビジネスパーソンが、本当の意味で元気になれば、日本全体がもっと明るく元気になっていくはずです。