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和える-aeru- (伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家)/矢島里佳



(2015年2月12日付け『【読書】和える-aeru- (伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家)/矢島里佳』に加筆修正したものです)

25歳といえば、僕は社会人1年生でした。世の雰囲気はまだまだバブル、何も考えずに就職し、嫌々与えられた仕事をしていた時期です。

その25歳で、ミッションを持って起業し3年目を迎え、ますます成長を続ける女性社長がいました。矢島里佳さん。その人が書いた本です。

<目次>
第1章 伝統産業に恋して
第2章 大学時代に「和える」を立ち上げるまで
第3章 「和える」最大の危機
第4章 常識はずれの「和える」のやり方
第5章 「和える」流 二一世紀の経営スタイル


会社名は「和える」。子どもたちのための日用品を日本の伝統工芸の職人方と共につくり販売している会社です。

社名の由来にもなっているミッションは、こういうことだと思います。

私がやりたいことは、日本の良き先人たちの知恵と、今を生きる私たちの感性を「和える」こと。自国の伝統を活かしながら、新たな伝統を生み出したい。(p195)

僕は和えるのロゴがかなり好きです。
こんなデザインです。

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「和える」のロゴは二つの円でできています。赤い日の丸のような円は、古き良き伝統や先人の知恵を表していて、そこから少し出ている模様の入った円は、今を生きる私たちの感性や感覚を表しています。
ちなみに、少し出ている円に入っている模様は、七宝柄です。(p131)

和えるのミッション、矢島さんがやりたいと明言していることをよく象徴しているデザインではないでしょうか。和える「らしさ」がよく出ていると僕は思うのです。おそらくあと何年かたつと、このデザインを見れば多くの人が「和える」を思い浮かべるときが来ると僕は確信しています。

さて、起業されたのは22歳、大学卒業にあわせてということですが、2年目に資金繰りがうまくいかず、こんなことを言わなくてはいけない事態を迎えたそうです。

(矢島さん)「もしもし、矢島です。あの・・・・・・、実は、今月お金がなくて、どうしてもお支払できなくなってしまったんです。必ず来月お支払いしますから、待っていただけませんか?」
(職人さん)「いいよ。待っているよ。それに里佳ちゃん、いつも僕の作る商品を全部買い取ってくれているけど、本当に大丈夫かな、って思ってたんだ。里佳ちゃんの会社がつぶれたら、僕のやっていることも伝えられなくなってしまう。だからがんばって!」(p164)

この経験から、二度とこんな状況にならないよう、しっかり経営しなくては、と決意をあらたにしたそうです。それも立派なことだと思うのですが、それ以前に、別な観点から僕はこの会話に凄く感動していたのです。

ひとつは、正直に自分からお金が払えないということを伝えている姿勢。当たり前だと言われればそれまでですが、できていない会社はたくさんあります。先日もある出版社が何年も執筆料を払わなかったことが話題になっていました。僕自身、「お約束の期日が過ぎておりますがご入金は・・・」と電話して「無い袖は振れない」と言われた経験があります(大昔の話です、前々職で営業をしていたころの話)

まだまだ甘えがあってもおかしくない時期に、こうやって話ができるのはそれだけでも凄いと思います。もちろん、そのままずっと払えないということではダメですが、その後ちゃんとしてきたから今があるわけですから、素直に感心したのです。

それ以上に凄いと思ったのは、在庫を抱えて商売をしていることです。職人さんがこういっています。
「いつも僕の作る商品を全部買い取ってくれているけど」

いま、在庫を抱えないことが善であるかのように言われています。確かに在庫を抱え過ぎるのはよくないでしょう。しかし、そのためにしていることといえば下請けに在庫を抱えさせ、JIT(ジャストインタイム)で納品しろ、などと無茶な注文をすることだったりします。形だけトヨタの前をして悦に入る企業がなんと多いことか。

安く売る努力をすることは悪いことではありません。企業努力でそれを実現するならそれはけっこうなことです。しかし、他の会社や従業員を犠牲にしてそれを実現するのは社会悪です。

もし、職人さんたちに適正な価格を支払わず、「もう、『和える』では作らない」と言われてしまったら、「和える」は伝統産業という素晴らしい技術を子どもたちにつなげなくなってしまいます。それでは本末転倒です。(p142)

もう作らないと言ってもらえる間はまだましです。他で作る可能性があるのですから。もしみんながみんな、自分が安く売りたいがために適正な価格を支払わなければ、職人さんはみんな廃業してしまいます。これはどんな業界でも同じことです。そんなことになれば、日本の資産の大損失になります。国益に反するじゃないか、と思うわけです。

今、私たちは自分のお金を何に使うか、選択すべき時代に来ているのではないでしょうか。選挙に投票に行くように、日々のお金の使い道も、私は投票行動だと思っています。自分が「これは!」と感じるものにしっかり投資し、残したいものを支持すること、それを行動で示すべきだと考えています。(p175)
「いいな」と思ったものがあれば、それを生み出した人に対して、価格を値切るのではなくその価値を認め、貨幣を交換させていただく。そういうことを大切にしてほしいのです。(p175)

こういう考え方が当たり前になる社会にしていかなくていけないと思います。20代半ばの若者がこうした考え方を体現しているのです。「和える」が、矢島さんが、いまの想いを持ったまま、大きく成長していくことを願っています。そして僕らの世代は、それが可能な社会を、環境を次世代に遺していく義務がある、と思っています。

(追記)
25歳だった矢島さんは、現在、29歳になったと思います。この間に、和えるは東京と京都に直営店を出店しました。その他のことにも積極的に取り組んでいます。まだまだ挑戦は続いていくのでしょう。 いまのままの姿勢で、和えるが成長しづづけることは日本にとっての財産になると僕は思っています。新しい経済の仕組みを生み出す起点になり得る存在だと信じています。一顧客としてその成長を見届けたいと思うと同時に、同じような志を持つ若者がいたら、支援していきたい。