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茶の本 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)



『東洋の理想(The Ideals of the East-with special reference to the art of Japan)』
『日本の覚醒(The Awakening of Japan)』
『茶の本(THE BOOK OF TEA)』


岡倉天心が生前、発表した著作です。天心三部作。すべて英文で書かれています。
3冊並べればわかると思いますが、亜細亜文化、日本文化に関する内容が書かれています。『茶の本』はけっして茶道についての本ではありません。日本文化は「茶」に集約される、と天心はいいます。「茶」は象徴であって、本質は日本文化論になっています。

天心は江戸時代末期に、すでに開港していた横浜で生まれ育ちました。幼少のころから英語に親しみます。後年、
「俺はアメリカ人より英語がうまい。アメリカ人よりアメリカの歴史を、社会を知っている」
と豪語したそうですが(実際にそれだけの語学力もあり、博学でもありました)そんな天心が、英語で亜細亜文化、日本文化を世界に発信しようとしたのが一連の著作であり、その集大成が『茶の本』だと言えると、僕は考えています。

<目次>
第1章 茶碗に込めた人間力
第2章 茶の流派
第3章 道教と禅
第4章 茶室
第5章 芸術の鑑賞
第6章 花
第7章 茶人たち

岡倉天心という人は「美」を重んじた人だと思います。
「真・善・美」
という価値観があれば、断然、「美」を大切にしました。

僕も、自分でできているかどうか、まったく自信はありませんし、というかできてないのですが、それでも何かをするときの判断基準は「美」でありたい、と思っています。
○○をすれば得をすると誘われても、
「それは美しくない」
と言って断りたい。美しく振る舞う自分でいたいと願っています。

この価値観、僕は同時期に、同じように英文で書かれた、新渡戸稲造の『武士道』にも共通すると思っています。この本もタイトルに惑わされて、戦争の書だと思っている人がいるようですが、ぜんぜん違います。日本の道徳的な価値について述べた本です。そしてそこでも「美」が最高の徳目であるとされている、と僕は解釈しています。

合理的に損得を判断して生きることが、「うまく生きた」とされる現代では、こうした本ははやらないのかもしれません。しかし逆にそうした時代だからこそ、「美」という価値観を捉えなおす必要もあるのだと感じています。

さらに、岡倉天心は、僕の解釈では、「亜細亜主義者」の源流の人でした。
『東洋の理想』の冒頭は
「亜細亜はひとつである(Asia is one)
で始まります。
意味するところは、この三部作を通して繰り返し語られています。そしてその哲学が「茶」に凝縮されている、ということです。

この本が書かれた当時も、「脱亜入欧」という言葉がはやりました。いままた、同じような風潮が感じられます。
グローバル化を単純に善だと考え、アメリカと同じように振る舞える国になることが、世界に貢献することだ、という話になりがちです。

しかし本当にそうなのでしょうか。こんな殺伐とした時代だからこそ「茶の哲学」に回帰してみることも必要だと僕は思います。
もし文明国と呼ばれるための条件が、身の毛もよだつ戦争による勝利によって与えられるものであるなら、私たちは喜んで「野蛮な国」のままでいましょう。
私たちの国の芸術や理想に敬意が払われる日まで、日本人は喜んで待つつもりです。(p17)

待つ余裕が今の時代にあるのかはわかりませんが、アメリカと同じように振る舞うことが「文明」だと言うなら、日本は「野蛮な国」であっても差し支えない。僕はそう思っています。

PS
致知出版から出されている一連の「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ」は、どれも非常に読みやすい現代日本語になっています。この『茶の本』も同じです。

帯に「101分で読める」ありますが、2時間あれば読めますから。そしてできれば『武士道』と読み比べてほしい。新渡戸稲造の『武士道』、このシリーズのなかにありますので。

武士道 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ2)




(2015-02-01記) 

(追記)
 致知出版の「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ」は、次々を刊行されています。
こうして多くの人が「日本の古典」に触れる機会が増えていくといいなと思っています。