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【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!/高橋洋一



21世紀の資本』を買ってはみたものの、本棚の飾りになっている人は多いのではないですか。728ページにも及ぶ大著を読みこなすのは簡単ではありません。

そこで、入門書を読んでみようとなるわけですが、それらを読んだからと言って理解できるようになるとは限りません。『21世紀の資本』が日本で刊行された2014年当時、「ピケティ入門」の類に数冊、目を通してみたのですが、いろいろ問題があるものだらけでした。

本書は、『たった1つの図でわかる! 図解経済学入門』の著者である高橋洋一さんよる入門書です。 『21世紀の資本』の主席訳者である山形浩生さんが 「やっと出た、『21世紀の資本』のまともな解説本! 」 と推薦されていて、誇大広告かと思いながら読んだのですが、そんなことはありませんでした。

<目次>
1 ,21枚の図で『21世紀の資本』を読んでみよう!
2
 ,結局のところ、ピケティは何を言いたいのか?
3 ,『21世紀の資本』その先の可能性―ピケティからの「返答集」(日本語未翻訳論文)要約

『21世紀の資本』の結論は簡単です。

「r>g」

この不等式がすべてを表しています。

rは、資本収益率、つまり資本に占める資本収益の比率、gは産出成長率、まあ、一般的な意味でのGDPの成長率だと思えばそう間違いではありません。

ここから導きだされるのは、労働による所得の増加よりも、資本による所得の増加のほうが常に大きいということです。つまり、持てる者はされに持てる者になるということで、「格差は必然的に拡大していく」ことになります。

それを数学のようにし証明したわけではなく、歴史的推移(事実)としてそうであり、これからもその傾向は続くだろうと予想したわけです。

これを言いたいがために、膨大にデータを駆使し、あれだけの大著になったわけです。これは学者として尊敬に値する仕事だと思います。さらにこの結論は、かつてサイモン・クズネッツが唱えた「資本主義は初期段階では所得格差が拡大するが、経済成長によって所得格差を縮小していく」(サイモンはこの理論でノーベル経済学賞を受賞した)という説を完全に否定してしまいました。経済学にとっては大きなインパクトにあったわけです。

しかし、一般の人がこの結論をどう導きだしたか、その過程を全部知る必要はありません。それほど暇な人は少ないでしょう。必要に迫られる何らかの事情がある人、あるいはこの手の本を読むのが趣味な人を除けば、途中で挫折するのがオチです。

必要なことは、結論と、導き出す道筋の「ざっくり」と見取り図、そしてこの結論に対処するための処方箋をピケティはどう考えているか、だと思います。

本書は、『21世紀の資本』から21枚の図を選び出し、結論である「r>g」を導き出しまでの過程をシンプルに説明しています。これだけわかれば、一般の人には十分でしょう。あるいは、本書読むことで、『21世紀の資本』本編に再チャレンジしてみようという気持ちが芽生えるかもしれません。

なにより、高橋さんが自説を控えめにして、解説に徹しているのが入門書として優れていると思います。高橋さんの考えがピケティに近いところがあるからなのかもしれませんが、きちんと、ピケティの考えが理解できるように解説しています。

竹信三恵子さんや池田信夫さんの書いた入門書は、ピケティの名を借りて自説を展開しているだけなので、とても入門書といえるものではありませんでした。この本は違う。山形さんが「やっと出た、『21世紀の資本』のまともな解説本! 」と言ったのがよくわかります。

なお、ピケティが示した格差拡大を解消する処方箋―国際協調による累進課税の強化―については、さまざまな批判が考えられます。僕は、考え方としては正しいと思いますが、実現性は極めて低いと思うので、別な方法を考えざるを得ないと思っています。高橋さんも、消費税よりも資本課税のほうが格差解消のためには有効だと述べていますが、それが理屈通りに実現できるかは疑問視しているようです。

ただ、どうであれ、自分で何かを考えていかなくてはいけない。他人に任せて結論にだけブー垂れるのはよくないと思います。

高橋さんは本書をこう締めくくてっています。僕も全く同じ考えです。

「経済のことはよくわからないと言って済ませてしまうのは安易すぎる。他人任せにしてはいけない」
―ある一般向けの講義のなかでピケティがこう話したように、個人個人が正しい知識をもって、社会について考えていくこと。
こうした主体性こそが、この格差社会を変えていく原動力となるのである。 (P160)
〈参考図書〉
21世紀の資本