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久しぶりにマザーハウスカレッジに参加しました。他の勉強会やセミナーは参加しなくても、ここだけは! と思っているのですが、今年は全然日程が合わなくて、2016年初参加が8月になってしまいました。

今回のゲストは、株式会社UPQ代表取締役社長の中澤優子さん。一人で家電メーカー(メーカーですよ)を立ち上げ、1年で全8カテゴリ、37種、59製品をリリースしました。量販店での販売も順調で、最近は多くのメディアにも取り上げられている方です。
(株)UPQのHP

1月のマザーハウスカレッジにもゲストで来られていましたが今回はある事情から急遽(*)決まった特別篇でした。1月に参加できなかった僕は、万難を排して参加しました。

写真 2 (1)

「香港行きの飛行機の中で、山崎さんを見かけたんですよ」
中澤さんはホスト役の山崎さん(マザーハウス副社長)とのご縁について、そう語られました。深夜発の香港便で、よくカフェに来てくれていた山崎さんが前を歩いているのに気付いたそうです。

中澤さんがやっているカフェが、マザーハウスの事務所のそばだった縁で、山崎さんはそのカフェに顔を出していました。お互い何をしている人かは知りません。山崎さんは中澤さんのことを「カフェの店員」だと思っていたそうです。

そんな女性から
「先日、深夜発の香港便に乗ってましたよね?」
と聞かれて不思議に思ったそうです。
「プライベートで行ったんですか?」
「いえ、仕事です」
となると、もっとわからない。なんでカフェの店員をしている人が、「仕事」で香港に、しかも深夜便で行くんだ? なったそうです。

この出会いから1年で、UPQとマザーハウスがコラボ商品を開発することになるなんて、人のつながりは本当にわからない(笑)

このエピソードが示すように、中澤さんは、何かあればすぐに現地に飛びます。主に中国の工場で生産しているのですが、フェイストゥフェイスで打ち合わせを繰り返す。徹底的に現場にこだわる姿勢が垣間見えました。

「中国製かあ」と思う人がいるかもしれません。しかし、それは損をする偏見だと僕は思います。製造業が中国から東南アジアにシフトしつつある現在、危機感を持っている中国人はたくさんいます。また、彼らは要求に応じた品質で作るところがあります。ですから、ダメなものはダメと伝えて作り直してもらう。それを繰り返すうちに 「この会社のクオリティはこのレベルまで高めないとダメ」
ということを理解して、製造してくれるようになるといいます。
もちろん全部が全部ではないでしょう。理解してもらえないと思う工場とは手を組まない。これははっきり決めているそうです。ただどこの国にも、ちゃんとやる奴もいれば、やらない奴もいるわけで、それは日本も同じです。できる奴と組む、という考えに国境はないと僕も思います。

その品質レベルを理解してもらうためにも、とにかく現場に足を運ぶ。中澤さんは、「中国で失敗して、撤退していたった企業は、全然現場に来ていない」と言います。メールなどで指示を出し、うまくいかないと、「やっぱり中国はダメだ」と他責にしてしまう企業が多いそうです。

だからこそ、すぐに現場に足を運ぶ。すべては現場から始まる。言葉ではわかっているはずなのになかなかできないことを、貫徹されていました。

むろん、手ぶらで現地に行くわけではありません。アイデアがあり、開発したいものがあり、開発途上の確認をしたいものがあるから、現地に飛びます。

「まずは法規制から調べます」
これは山崎さんから
「製品を開発するとき、何から始めますか?」
と問われたときの答えです。

ベンチャーを立ち上げた人、デザイン志向の人は、どうしてもプロダクト中心にものを考えます。それが悪いわけではありません。いえ、「こんな製品を作りたい」という想いがなければ、ベンチャーを立ち上げても失敗に終わるでしょう。

しかし想いだけでビジネスが成功するわけがありません。このマザーハウスカレッジの一貫したテーマは
「Warm Heart, Cool Head」
です。熱い想いと冷静な思考、その両方がないとビジネスはうまくいかないよね、でもそれを両方一度に学んだり議論できたりする場がないよね、というのがもとからのコンセプトです。

ですから、中澤さんが、想いだけでなく冷静な判断力を持っていることには驚きはしなのですが、それでも「法規制」と言われたときには、さすがに驚きました。

たとえば海外で見た製品にインスパイアされて、あるアイデアが浮かんだとします。しかしそれを製品化しようとすると、日本では法規制に引っかかることはありがちなことです。国によって規制される法律は違いますから、その国ではOKでも日本ではダメなケースは珍しくはありません。

その場合、法令を変えてもらうことを考えるのではなく、法規制の中でなんとか製品化することを考えるそうです。まず形にして、使ってもらって
「ほら、便利でしょ、楽しいでしょ」
と体感してもらうほうが先。便利さや楽しさを多くの人が知れば「もっと!」という意見が増えて法規制が緩和されるようになっていくと考えていらっしゃるようでした。

ここ10数年、官僚を「抵抗勢力」と呼び、「規制緩和」を声高に叫ぶことがかっこいいとの風潮があります。そう叫んでいれば、政治家なら票になるかもしれません。評論家ならメディアからお声がかかる機会が増えるかもしれません。しかし、ビジネスの現場ではそんなことを言っても一ミリも前には進まない。それより、製品として世に送り出してマーケットに尋ねるほうが早いわけです。ものすごく、地に足を着けた考え方をするな、と驚きました。

その落ち着き、冷静さは、開発についての考え方にも現れています。「スペック競争はしない」との考えは、カシオで携帯電話の開発をされていた時代から思っていたそうです。次々と製品を投入していかなくてはいけないので、本当に必要かどうかわからないようなスペックにこだわってしまう。0.1ミリ薄くすることがお客様にどんな意味があるのか。そして、そのために価格も高くなってしまう。そもそも型落ちになってしまう製品の中にも、良いものがたくさんあるではないか。(iPhone5S はいまだに売れています)

だから、自分が開発する製品はお客様目線を意識されたそうです。「スペック」「価格」「デザイン」の間でバランスを取って、お客様に価値を感じてもらえる製品にする。プラスそこに「遊び心」を入れて楽しんでもらえたり、驚いてもらえたりする製品を送り出していきたい、ということです。


そして最後に話されたファイナンスのこと。僕はアンケートを書いていた手が止まりました(笑) 驚いてしまったからです。

ベンチャーでものづくりの会社はあまりないと思います。それは、製造業は初期投資が大きいからなのも一つの理由だと思っています。ですから、UPQがどんなファイナンスをしているのか興味があったのですが、それをズバリと答えていただけました。

どこまで書いていいのかわからないので、詳細なやり方については説明しませんが、聞いてみれば合理的なやり方です。突飛なやり方なわけではありません。しかし、普通はなかなか思いつかない。そんな手があったのか! と思わざるを得ない方法でした。

これも、「なんとか製品を作りたい」との想いと、どうすれば資金繰りがまわるか冷静に考えられた結果だと思います。自分も経理を預かる身として、真似(やり方でなく考え方)をしないといけない、と強く思いました。

創業して1年、まだまだこれから挑戦を続けていかれるでしょう。UPQと中澤さんの今後に注目していきます。

(*)この日、「電動バイク用の牛革バッグ UPQ、マザーハウスと共同開発」とのプレスリリースがありました。
sankeibiz の記事はこちら。