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NHK 100分 de 名著 内村鑑三『代表的日本人』 2016年 1月 [雑誌] NHKテキスト/若松英輔



NHK Eテレの「100分 de 名著」のテキストです。世界の様々な名著を25分番組4回、計100分で紹介していく番組です。これがなかなか面白い。ただの紹介ではなく、「なるほど、そう読むのか」と思うことがあるなど、いろいろ深掘りをしてくれることもあります。

今回の名著は内村鑑三の『代表的日本人』。僕もこの番組を全部見えてきたわけではありませんが、今回のシリーズは、番組史上、ベスト3に入るのではないかと思っています。

<目次>
はじめに 内村鑑三とは誰か
第1回  無私は天に通じる
第2回  試練は人生からの問いである
第3回  考えることと信じること
第4回  後世に何を遺すべきか

第1回が西郷隆盛、第2回が上杉鷹山と二宮尊徳、第3回が中江藤樹と日蓮、『代表的日本人』で紹介される5人をこうして紹介していきます。そして第4回では、この本と姉妹編になる(と若松さんは言われる)『後世への最大遺物』を取り上げます。

上杉鷹山と二宮尊徳、中江藤樹と日蓮をセットにしているのは意味があります。単に本の順番通りに並べたわけではありません。内村が言いたかったであろうこと、だからこの順番に並べたのであろうと若松さんが読み取ったことが、それぞれの回のタイトルに表れています。

そのうえで、この5人に共通すること、内村が訴えようとしたことは、「誠実」であることの大切さ、だと思います。誰も見ていなくても「天が見ている」とと思い、天と対峙しして誠実な人生を歩むことの大切さ、そうした人が日本では尊敬を集めるのだということを示したいのだと思います。

この本は、キリスト教徒である内村がキリスト教社会の人々に日本を紹介する本でもあります。天と神を重ね合わせることで彼らにも理解しやすくしているところはあると思います。また、そうした概念があるからこそ、キリスト教が入ってくる前から日本は文明国であり、ヨーロッパに負けないどころかそれを上回る人物を輩出してきたのだと言おうとしているのだとも思えます。

そうした狙いはあると思うのですが、若松さんがいうように、『後世への最大遺物』とセットで読んでみると、少しだけ違う読み方もできるような気がします。

『後世への最大遺物』の中で、内村は我々が後世に遺せるものは、「金・事業・思想・勇ましい高尚な生涯」である、と述べています。優越は決してつけていません。どれも大切だと言っています。ただ、金・事業・思想は誰もが遺せるものではない。また、遺し方によっては害にもなる、といいます。それに対し勇ましい高尚な生涯は利益ばかりあって害がない、と言っています。

これを踏まえて『代表的日本人』を読んでみれば、5人とも勇ましい高尚な生涯を送った人だということがわかります。そして魂が至誠であれば、天地も動かす、権謀術数は必要ない、と考え行動してきた人たちです。

もちろんこの5名は、勇ましい高尚な生涯のみならず、事業や思想を後世に遺しました。しかしそれが遺ったのは、困難に打ち勝ち、誠実な生涯を送ったからこそだということです。

この本が書かれた明治中期、すでに経済合理的な考え方は日本に入ってきていました。というより、損得を計算して生きることは普通のことになっていました。そうした視点から見れば、なんと無駄の多い生き方か、と思われるでしょう。しかし、そうではないのだ、と内村は言いたかったのだと思います。
「誠実にして、はじめて禍を福に変えることができる。術策は役に立たない」
「なすべきことは、結果を問わずなさなくてはならない」
という生き方こそが、日本人の美徳としての生き方なのだ、と説いていると思います。

ですから、『代表的日本人』は、海外に日本の良さを紹介するとともに、日本人に対して、本来の生き方を思い出せ、というメッセージを送ったものだと思います。

もちろん、僕の主観に過ぎません。別な読み方もあるでしょう。ただ、若松さんは。 「『代表的日本人』は、読むたびに違う気付きがある。年齢、時代によって違く読み取り方がある」
と言われています。

このテキストをサポートに、『代表的日本人』と『後世への最大遺物』の2冊、ぜひ読んでほしいと思います。今の自分の生き方を振り返る、いいきっかけを与えてくれると思います。

PS
『代表的日本人』はこれが読みやすいです。
代表的日本人 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ4)



ただ、この本は、岩波文庫の翻訳が奇跡的に読みやすいので、こちらでもいいかもしれません。
代表的日本人 (岩波文庫)



『後世への最大遺物』はこちらを。
後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)




また併せて、同時代、日本人が世界に日本を紹介するためイ英語で書いた本、『茶の本』と『武士道』も併せて読んでみてほしい。

茶の本 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)



武士道 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ2)



『茶の本』に関しては、こちらもお薦めです。翻訳が読みやすいこともありますが『東洋の理想』の抄訳がついているのがいいところです。

新訳・茶の本―ビギナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)