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調べる技術・書く技術/野村進




ノンフィクションというジャンルが蓄積してきた調査と執筆の技術の中から、一般の読者にも役立つに違いないフォームを伝えるのが、本書の最大の目的である。(p11)

ノンフィクションの書き方についての本です。そのためのノウハウやスキルについて、惜しみなく書かれています。しかし、ただのハウツー本ではありません。文章を書くことで得られる喜びも教えてくれます。

<目次>
第1章 テーマを決める
第2章 資料を集める
第3章 人に会う
第4章 話を聞く
第5章 原稿を書く
第6章 人物を書く
第7章 事件を書く
第8章 体験を書く

すべての章に役立つ内容が満載です。第2章から第5章は、取材をしてインタビューをして原稿を書く。その順番通りに、必要なことが網羅されています。ただ僕が個人的に特に学びが大きかったのはその前の、第1章でした。

「なんでも好きに書いてもらっていいですよ」と言われるんが苦手です。ある程度「こんな感じのテーマで」と言われたほうが書きやすい。つまり、自分でテーマが決められない、ということです。

書評というのはその点、実は楽なのです。本という素材はすでにあります。その本のテーマに沿って自分なりの考えをまとめていけばいいわけです。しかし、評論であれエッセイであれ、普通はそうはいきません。そもそも、プロではない僕が、「こんなテーマで書いてください」なんて依頼されることはめったにありません。何かどこかで表現しようと思えば、自分でテーマを決め、企画を立て、そして書く、という風しないといけないわけです。

漠然と書きたいことはあるんだけど、それが明確にできない状況で、どうやってテーマを決めていけばいいのか。

何かを書きたいのなら、現在の自分を形作った根っこにあるものを、しっかりとつかまえて、よくよく噛みしめておきたい。フィクションであれノンフィクションであれ、書き手が立ち返れるところはそこしかない。(p25)

自分を突き詰めていくしかないのだと思いました。自分なりの視点、自分なりの切り口を持たないとテーマは出てこない。ただ、素材そのもののに独自性を求めるのは無理があります。そこをどう考えるのか。

本書の中に「チャップリンのステッキ」というたとえ話が出てきます。ステッキは別にチャップリンが発明したものではありません。前から普通にある道具です。その使い方に独自性を持たせることで、チャップリンの個性が生まれた、ということです。

つまり、すでに言い尽くされた思われるテーマでも、視点や切り口を変えることで新たなオリジナリティが生まれるということです。そのために自分を根っこを突き詰めておくことが大事になります。

ただ、突き詰めると言っても、じっと考え込んでいればいい、というわけではなさそうです。

机上であれこれ思い悩んでばかりいて、いつまで経っても動き出さないのが一番まずい。とにかく動いてみること。考えるのは、それからでも遅くない。(p32)

まさに「走りながら考える」ということですね。僕の場合は、そういう形でしか考えることはできそうにありませんけど(苦笑)

この本は2008年の刊行です。もっと早く読んでおけばよかったと思いました。が一方で、いまでなければここまでさまざまなことを吸収できなかったと思います。読むべきタイミングで読めたんだと思います。

文章で、ノンフィクションで何かを表現することは素晴らしいことだと確信が持てます。これからそれを生業にするまでは思っていませんが、何らかの形でそれに関わり、表現をし続けていきたいと決意できました。

続けていけば、きっとこんな風になれるのだと予感しています。

人に会い、話を聞き、文章にする。たくさん読み、たくさん観、たくさん聴く。こんなことを繰り返すうち、知らず知らずに自分が豊かになっている。多少なりとも、ましな人間になっている。傍目にはどう映ろうとも、自分自身にはそうした実感がある。(中略) ノンフィクションの仕事に携わる喜びとは、つまりこういうことではないか。(p242)

(2014年8月13日記) 

(追記)
いま、少しずつ読み返しています。文章を書く以前にどんな準備をすればいいのか、取材はどのように進めればいいのか。そこがぶれたまま書くと、誰にとって価値があるのかわからない文章になってしまうと最近は感じています。