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ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方/慎泰俊




先日、(2012年11月当時)
働きながら社会に関わる~ビジネスパーソンが貧困問題に挑む理由~
というセミナーで講師をお願いした慎泰俊さんのご著書です。

なぜこの本を書かれたのか、
なぜ働きながらLIPというNPOを立ち上げ、活動を続けているのかは、「はじめに」を読んでいただけたらわかると思いますが、その一端について、ブログでも触れられているので、紹介しておきます。

目指すものは「必要なお金が、必要としている人の手元に届く」ような社会。

お金があればあるほど幸せだ、というのは嘘だと思いますが、お金がないが故に不幸であるということはあり得るでしょう。そして、それはお金の量というよりもタイミングの問題の方が大きいようにも思えます。

自分を振り返ってみても(細かくは書けませんが)あの時あのタイミングであのお金があったから、いまこうして僕は生きながらえている、と言いきってもいい場面を何度も思い浮かべることができます。

チャンスとお金は親和性があります。お金があればそのチャンスを活かして人生を切り開くことも立て直すこともできる人はたくさんいるはずです。お金がないという理由だけで、そのチャンスを手に入れることができないのは理不尽なことだと、自分の体験から逆に思うのです。

僕の目の前にあったお金は僕が稼いだものではない。父親が稼いだり残してくれたりしたお金です。つまり単にラッキーだっただけです。もちろん、そのチャンスを逃さないように大切にしようと思って育てきた自分の努力はありますが、そのチャンス自体は幸運によって手に入れただけです。だからこそ、少なくとも誰もがそのチャンスの前には立てるような社会でありたい、と思っています。

ところが現実は違います。
 
先日、ある自己啓発系の記事を読んでいたら
「借金してでも自己投資をすることが将来大きなリターンになって返ってくる」
と書いてありました。

この考え方自体は、僕も賛成です。お金はため込むばかりでは脳はない。どう有効に使うかが大切だと思っています。問題は、一番切実にお金を必要とする人、人生を立て直し、切り開いていこうとする人の多くは、借金が出来ない、ということです。

たとえば、会社をリストラされ失業中の人が、人生の立て直しを図るべく、なにか資格を取ろうと思っても、普通の金融機関はお金を貸しません。こうした人たちにどうやったらお金が廻っていくのか、その仕組みを考えない限り、
「借金してでも自己投資せよ」
はただのお題目にしか過ぎないことになります。

本書はその仕組みを考える上で大きなヒントになると思います。

<目次>
はじめに
第1部 ファイナンスの基礎を理解することからはじめよう
第2部 共同体の「グループの力学」によるファイナンス
      ──コミュニティファイナンスの現場
第3部 情報技術の進歩が可能にした新しいファイナンス
      ──P2Pファイナンスとクラウドファンディング
第4部 21世紀のファイナンスがもたらす未来
あとがき


目次だけ見ると専門的で難しそうに思うかもしれませんが、それほどでもありません。
第1部のファイナンスの基礎、
「コスト(不確実性・振れ幅)と時間価値と情報取得の対価」
の概念を理解できればその先は問題なく読めると思います
別に資格試験の問題ではないので(笑) 細かな数式も出てきませんし、小学校で習う四則計算ができれば十分に理解できます。

第2部、第3部の一部には専門的で難しいところも出てきますが、そこは飛ばして読んでも全体を理解するうえで大きな支障はないので、気にしなくても大丈夫です。

とにかく「はじめに」を読んでもらって、気になるようならぜひ全体を読んでみてください。

ここで取り上げられている、マイクロファイナンスもP2Pファイナンスも魔法の杖ではありません。これですべての問題が片付くわけでもないですし、この手法そのものの中に問題点もあります。しかし「だからダメだ」と非難し切って捨てるのではなく、批判的に問題をクリアしていき、また、別な手法と組みあわせることで、より良い仕組みを作っていくことは可能だと思います。

こうした仕組みづくりは、弱者救済のためだと僕は思いません。お金を必要としている人にお金が届くことで、
そうした人が自立し自活していくことは、経済を活性化し社会を安定させます。逆にいまの状態を放置すれば、
いわゆる社会保障費は増大し、一般の人の負担は増え、経済は今以上に停滞するでしょう。
それはまずいから社会保障費を切って捨てるのであれば、生きるために犯罪に手を染める人が増えて社会は不安定化します。

こうした仕組みを考えることは、まわりまわって自分のためなのだと僕は思います。
(2012年12月9日記)

(追記)
慎泰俊という人を知って、金融に対する考え方が変わりました。「必要なお金が、必要としている人の手元に届く」ために金融の仕組みは使えるのだ、本来の役割はそうなんだ、と思えいました。金融が良い悪いではく、どう使うのか、人間も問題だと思えるようになったきっかけの本です。