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ソーシャルファイナンスの教科書―――「社会」のために「あなたのお金」が働くということ/河口真理子



「貯蓄から投資へ」というスローガンをよく聞きます。政府がその方向に誘導しようとしていることは明らかでしょう。金融機関などでも、「投資教育」が盛んにおこなわれています。

しかし、「投資」というといまだに胡散臭いと考える人が多いのも事実です。株や投資信託には目もくれず、銀行の定期預金、貯蓄性の生命保険を利用する人がまだまだ多いのが実態です。

投資、「金融投資」に対する誤解が根強く残っているからこうした状況に変化がないのだと思いますが、それはなぜなのか。本書は、その原因を解き明かしながら、変わりつつある状況をさまざまな角度から解説し、投資本来の意味を教えてくれる、まさに「教科書」のような内容になっています。

<目次> 
第1章 なぜか、日本人に多い投資アレルギー
第2章 金融のしくみが社会を変える
第3章 自分らしく暮らすお金とのつきあい方
第4章 社会に役立ち、配当も入る投資をする
第5章 「社会課題を整理する」
第6章 世界に広がるサステナブル投資 

そもそも金融とは、お金が必要な人に融通することです。それは融通された人を通じて、自分のお金に社会で働いてもらうことを意味します。(p8)

これが金融の本来の意義です。投資とはこの金融の仕組みの上にお金を流していくことに他なりません。もちろんお金に「働いて」もらい以上、報酬が欲しいと思うのは当然ですから、リターンを期待して当たり前。しかし、それがすべてではないのです。

なぜなら短期的に「必ず儲かる」方法は誰にもわからないからです。世界情勢なども関係してきますから、自分の努力でどうにかなるものでもありません。それを第一義に置くと、夜も寝れなくなります。

また、考え方によっては、リターンは必ずしも金銭的利益である必要はないとも言えます。たとえば、好きな野球チームやアーティストを応援するのは、「成長していく姿に投資する」という部分があるでしょう。同じように、自分がいいと思った企業やNPOの成長に投資をしていく場合、リターンは金銭的報酬でなく、「成長した姿」を見ることになってきます。そこには「短期的」な儲けを考える必要はなくなります。

応援した企業が、長期的に成長していけば、金銭的なリターンも「長期的」には期待できます。そして、長期投資であれば、「事業リスク(その事業がうまくいくかどうか)」は取らなくてはいけませんが、「相場リスク(さまざまな要因による相場の乱高下)」はほとんど考慮しなくてよくなります。

では、どのような企業を応援すればいいのか。それこそ個人の好みの問題ですから、自分で考えてください、ということなのですが(笑)、ひとつの考え方として「社会的な課題を解決を目指している企業」というのは考えられます。

本書の4章以降では、現代で顕在してきているさまざまな社会的な課題を取り上げています。そしてそれを解決しようとする企業をどのように投資で応援できるのか、そのプラットフォームも紹介されています。

僕自身、いままでのインデックスファンドを中心とした投資スタイルから、本書で紹介されているような、投資型クラウドファンディングや、投資哲学を明確にしたファンドに投資先を変えてきています。もちろん、リスクヘッジの意味で、インデックスファンドをゼロにすることは考えていませんが、全体として
「コツコツ投資からわくわく投資へ」
という気持ちで動いています。

どのような投資スタイルにするかは、個々人の考え方次第ですが、それを確立する上で、本書は参考になることがたくさんあると思います。投資は、個人が単なる不労所得を稼ぐ手段ではなく、社会にとって必要不可欠なものだということがわかるだけでも、本書を読む価値はあると思います。

自分が投資したお金はどのように使われるのか、そこに少しでもいいので興味を持ってみることだと思います。それは金融投資をするしないに関わりません。

しかし、実は私たちは知らないうちに投資家になってる可能性も大きいのです。実は年金基金や生命保険を通じて、間接的に投資家になっているからです。(p62)

自分が望まないような使われ方をしていないかチェックする。使われてしまっているなら意見を表明するなり、違うところに投資先を変えるなり、という行動を起こしてみるといいと思います。

意志あるお金は社会を変えるのです。

PS
なお、短期的な株式売買がダメだというつもりもありません。投機的な行動もそれこそ個人の趣味でしょう。ただ、リスクと特徴を理解した上で行いましょう、とだけは言っておきたいと思います。博打で一攫千金を射止めた人はいても、長期的な資産形成をした人はいませんから。