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明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法 / 佐藤尚之



コミュニケーション・ディレクターであるさとなお(佐藤尚之)さんの新著。
1年間に、世界中の砂浜の砂の数と同じだけの情報量が流れる現在を「情報の”砂の一粒”時代(砂一時代)」と名付け、そんな時代に「伝わる」方法があるのか、それをどんな方法なのか、を考えていく本です。
電通でCMプランナーやコミュニケーション・デザイナーをされていたさとなおさんらしい話の流れで、とても理解しやすかったです。
<目次>
はじめに
―「最近なんだか伝わっている手応えも実感もない」とお嘆きのあなたに
第1章 「情報“砂の一粒”時代」がやってきた
―「伝える仕事」に携わる人にとって超アゲンスト
第2章 忘れちゃいけない! 情報“砂の一粒”時代「以前」を生きる生活者たち
―生活者を2つに切り分けてプランニングする
第3章 友人知人という最強メディア
―砂一時代という超アゲンストに打ち勝つ方法
第4章 ファンベースとマスベース
―砂一時代と砂一時代以前でプランニングを切り分ける
第5章 ファンにアプローチする3つの方法
―砂一時代の生活者にどうリーチするか
第6章 ファンからオーガニックな言葉を引き出す7つの方法
―砂一時代の生活者が態度変容するオーガニックリーチ
第7章 どんな課題でも70点以上とれるプランナーになるために
―「基本的な構築」を一番大切にしよう
おしまいに
―ボクたちは幸せな時代に生きている

圧倒的絶望から始めよう(p30)

この一文が象徴的です。砂一時代には、「情報は伝わらない」という前提に立たないと伝える仕事はできない、ということです。

では、どんな情報なら伝わるのか。いま最も信頼性の高い情報は「友人・知人」からのものだ、と書かれています。思い当たる節がある人は多いのではないでしょうか。何か商品を購入するとき、ネットで検索をして候補を選択して、それを使っている友人に評判を聞く。そして購入商品を決める、という経験を一度もしたことがないという人は少なでしょう。
また、たとえばプロレスにまったく興味がなかったのに、友人があまりに熱心にプロレスの魅力を語るので、試しに観に行ったらはまってしまった、というような経験を持つ人も多いはずです。(プロレスはあくまで例です。競馬でも宝塚でもなんでもいい)

昔からありがちなことですが、以前は、会うかせいぜい電話で話を聞くことでしたこうした情報を知るすべがありませんでした。伝える方としても、一人ひとりに伝えていくしかありませんから、伝播していくには時間がかかりました。

だから、早く広く、一気に情報を届けるにはマス媒体を使うことが有効な手段だったわけです。しかし現代は、情報が洪水のように流れ出る時代です。そう簡単に認知されません。無理に目立たせれば逆に嫌悪感を持たれてしまう恐れもあります。

一方、誰でもがSNSなどを通じて発信できるようになりました。友人の「これ、いいよ」「これ、面白いよ」という情報をリアルに会うことなく、知ることができるようになりました。

だから、ファンを、リピーターを大切にした施策が必要になります。そうした人の発信によって、新たなファンを増やし、また発信してもらうことで、情報は広く伝播し、商品・サービスは成長していくのだということです。

このやり方、僕が理想に描いている営業手法そのものだと思います。お客様を大切にして、お客様のためになるように行動し、ファンになってもらう。その方に別なお客様の紹介していただき、同じように同じように大切に対応してファンになっていただく。この繰り返しこそが営業の本筋だと思っています。本当に凄い営業パーソンは、ほとんどの仕事を紹介で獲得していますから。

マス媒体で伝える仕事をされてきた方の多くが、こうした営業の経験がない。だから、どうしていいのか戸惑ってしまっているのだと思います。やることはシンプルです。もちろん、ネットを使うという意味で、いままでとは違うこともしなくてはいけません。気をつけなくてはいけないことも多々あります。具体的なことは僕が解説することではありませんので(その力量は僕にはない)本書を読んでいただければよいと思います。

以下、感じたことを二点ほど付け加えておきます。
ひとつは、ネットを活用しようとすればするほど、リアルな人間関係が大切になることです。結局、最も大切にされる情報が「友人・知人」であるということは、その前に人間関係ができていないといけないことになります。ネットで完結できる人間関係もあるでしょうが、それは少数です。もしかするといままで以上に、face to faceのコミュニケーションが大切になるのかもしれません。

もうひとつ、本書は広告を仕事にしている人向けに書かれているように思われるかもしれませんが、そんなことはないと思います。いまは誰でもが個人で発信できる時代です。フリーランスで働く人はもちろんのこと、そうでない人でも、「パーソナルブランディング」をしていくことが必要な時代になってきています。パーソナルブランディングは、けして自分を大きく見せるものではないと思います。等身大の自分を、多くの人に理解してもらうこと、そして関心をもってもらいファンになってもらうことが目的だと思っています。その面でも、多くの示唆を与えてもらえる本だと思います。

PS
全体の趣旨は砂一時代にどんなことをすればいいのか、という内容ですが、忘れてはいけないのは第2章に書かれていることです。日本人の約半数は、ネットで検索などしない、ネットで情報を得たりしない、という現実です。
ネットで話題になったからといって多くの人に伝わるわけではない、というのは、半分は砂一時代における情報の洪水が原因ですが、もう半分はそもそもネットを見ていない人が多くいるから、ということになります。そこを勘違いして、ネットだけで情報を流通させようとしても、無理があります。完璧にできたとして(それはほぼ不可能なことですが)日本人の半分にしか届かないのです。
だから、「生活者を2つに切り分けてプランニングする」ということになるのですが、それ以前に、ネットを万能なものと過信しない、ネットの世界だけがすべてではないということをこうした面からも強く意識しておく必要があるのだと感じます。

明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法