「自分の言葉」をもつ人になる/吉元由美



「自分の言葉」というフレーズが実は嫌いです。言葉は公共物。自分勝手に使われてはかなわない。ずっとそう思ってきました。いまでもそう思っています。しかし、この本を読んで、「こういう使い方なら『自分の言葉』という言い方もありだなあ」と思うようになりました。

<目次>
プロローグ 「イメージの葛籠」をあけるとき
第一章   言葉はどのように生まれるのか
第二章   誰にでもできる感性の磨き方
第三章   吉本メソッドの具体的トレーニング法
第四章   「自分の言葉」で情景や心象風景を描く
エピローグ あなたの物語を紡ぐ言葉

著者の吉元由美さんは、杏里や平原綾香などの歌詞を手掛ける作詞家です。現在は作詞以外にもサロンセミナーや言の葉塾などを主催され、淑徳大学の客員教授をされるなど、幅広い活躍をされている方です。

一種の文章読本ですが、もちろん論文やビジネス文書を書くための指南書ではありません。自分の気持ちを、伝えたいと願うことをどうやって表現していくのか、そのメソッドについて書かれています。

大切なことは考えることではなく感じること。だから第二章では感性の磨き方が具体的な書かれます。そして、磨かれた感性をもとにそれをどう言葉にしていくのかというメソッドがその後書かれています。

一貫して貫かれているのは「言葉を磨くことは心を磨くことだ」ということではないかと思います。表面上のテクニックだけ身につけても仕方がない。伝えたいこと、伝えたい想いがあるからこそ、言葉にして表現したいと思うわけです。伝えたいと思うから、テクニックを学ぼうと思うのであって、自分の中がからっぽでは表現したいとも思わないはずです。

僕は以前、山田ズーニーさんの文章講座を受講したことがあるのですが、そのときズーニーさんに言われたのが
「ないものは書けない」
でした。これには続きがあって
「いまのあなたにしか書けないことがある。あなたの書くものを待つ人がいる」
結局、自分の中にあるものを種にしない限り、言葉は上滑りするし、表現にならないのだと思います。

その上で初めてスキルが必要になるのでしょう。そのことも言及されています。

たとえば『「悲しい」という言葉を使わずに悲しみを表現する』という節があります。もの凄く納得しましたし、自分も試行錯誤して工夫したいと思いました。

「元気になってほしい」というメッセージを伝えるときに、「元気出そうぜ」と言ってしまったらなんのひねりもない。意味は伝わるでしょうが想いが伝わるとは思えません。これは表現とは言わないだろう、と前から思っていました。だからより、腑に落ちたのだと思います。

ただあくまで、自分の中の想いがあっての話です。だからやっぱり「心を磨く」つまりは「自分を磨く」ことが表現の最も根源にくることなのです。

「表現とは存在証明だ」という一文がありました。表現を求めれば、否応なしに自分をさらけ出すことが必要になります。そうでなければ、本当の意味で表現にはなり得ない。自分の内から湧き上がるような言葉こそが本当の表現なんだと思います。そのために何が必要か、何をしていけばいいのか、この本は多くの示唆を与えてくれます。

自分の言葉を持つ人になる